歴史街道 2016年 04 月号

丁度、浅田次郎の大長編小説「終わらざる夏」を読んでいるところで、この小説の舞台が北千島の占守島（しゅむしゅとう）であるところからアリューシャン列島との位置関係に興味を持っていたところ、「歴史街道」にて「１９４３年キスカ島の奇跡」が発行されたので飛びついて買ってみました。私のような戦中派世代にとっては、アリューシャン列島の中のアッツ島が昭和１８年５月、米軍の逆上陸作戦により壮絶な玉砕を遂げたことはリアルタイムで良く知っています。アッツ島と合わせて語られるキスカ島も当然玉砕の運命にあったものと思っていましたが、本書によってキスカ島のわが軍将兵５千数百名は無傷で脱出したことを知りました。本書によると、日本軍がアリューシャン列島のアッツ、キスカの両島を占領したのは、これによってオホーツク海のソ連と北太平洋のアメリカの分断を意図し合わせてアリューシャンからの日本本土爆撃を未然に防止しようとしたことが分かります。しかし、その後、戦局の大勢は南方方面に移り、大本営はアメリカによるアッツ島攻撃に援軍を送らず見殺しにすることに決めました。残るキスカ島の将兵をなんとか救出せねばならないと考えたのが陸軍一のソ連通樋口季一郎中将であった。樋口は救出艦隊の司令長官木村昌福少将に命じキスカ島救出作戦を練り上げさせる。そして木村は現地の気象条件を綿密に調査せしめ、濃霧の中をキスカ島将兵全員の無傷の救出に成功したのです。私が本書から学んだのは以上のようなことですが、雑誌という形態をとっているために、記事が細切れでなかなか全体像を把握し難い。ばらばらの記事を全部読んでみると、ようやく上記のようなストーリーが読み取れるわけで、もうちょっと読みやすい方法はなかったのかなと思います。また千島列島とアリューシャン列島の位置関係がもう少し分かり易い地図があれば尚良かったと思います。